2022年10月31日
「企業研究」科目でらつ腕女将宮﨑氏の経営理念学ぶ
経営学部の専門科目「優良中堅?中小企業研究B」では、企業の経営者を招いた講演会を定期的に開催しています。
10月19日には、神奈川県秦野の鶴巻温泉にある元湯陣屋の女将?宮﨑知子氏が、株式会社陣屋および株式会社陣屋コネクトの経営者として登壇し、経営を学ぶ学生に対し、自身の企業家としての経験と今後の展望について講義しました。
はじめに宮﨑氏は、修行期間や引き継ぎがないまま2009年、多額の借入金を抱える旅館の女将になり、経営の見直しに着手した経緯を話しました。経営改善のためには経費削減と同時に宿泊の単価を上げる必要があると考えた宮﨑氏は、高付加価値?高単価?低稼働率への方向転換を図り、さらに経営の安定のためにブライダル事業など多業種化を実行しました。
約2ヶ月でこれまでなかった社是を決め、情報を活用した業務改善のために基幹システムの自社開発に取りかかったという宮﨑氏。新しい経営者の動きは、従業員にすぐに受け入れられるものではないと考え、全従業員に自分ごととしての意識を芽生えさせ、変革への前向きな姿勢を根付かせることに取り組んだといいます。
こうして今では、旅館の予約、接客、料理、清掃?設備、経理、マーケティングなど、旅館業に関わる全ての業務が一つのアプリケーションで繋がり、情報を共有?活用することで効率的な業務体制が実現しました。
さらに、IoTの活用と料理や施設?設備、サービスの改革を行うことで、顧客満足度を高め、高付加価値化を着実に実現していくことになりました。
さらに経営者として従業員満足度を追求した宮﨑氏は、週休3日や宿泊休館日を設けるなどのワークスタイル変革にも着手。プライベートの充実や研修会の開催などを通してより良い働き方を考え、旅館業が憧れの仕事になるような取り組みを進めています。
この成功事例は、経営の多業種化にも繋がっていきます。自社開発した旅館?ホテル向けのクラウドシステム「陣屋コネクト」を商品化し、システムを商品として販売する株式会社陣屋コネクトは、現在全国450施設以上が利用、収益の半分を占めるほどになったことで、コロナ禍でも事業を継続させることが可能となりました。
さらに今後は、旅館業を複数店舗に拡大、旅館だけではなく地域観光も含めた振興を図るため地域共通DXシステム「里山コネクト」を開発し地域にDX基盤を提供する事業を展開していくといいます。
経営を任されてから十数年で経営改善を果たし、新たな事業を次々と展開していく経営者の講演に、学生は食い入るような目で話を聞いていました。経営者として現状を的確に把握する観察眼と、改善点を見つけて改革をする実行力、さらに新しい可能性を捉える力といった経営手腕を発揮し続けている宮﨑氏の姿に大きな刺激を受ける機会となりました。
- 講演する宮﨑氏