2022年03月18日
まちづくり学系 「まちづくりフィールド演習」で世田谷キャンパス屋外空間における居場所づくりを実施(3月18日更新)
理工学部まちづくり学系の3、4年生を対象とした集中講義「まちづくりフィールド演習」が、秋期を通して実施されています。例年は新潟県で合宿をともなうフィールドワークを行っていましたが、今年は感染症対策のため、学内で実施可能な内容として新たに取り組むこととなりました。
新たな演習の課題は、「丸太1本で居場所をつくる」。
これは、長期におよぶ感染症拡大で新たな生活様式が模索される中、屋外空間の役割を見直すとともに、世田谷キャンパスの屋外空間を活用するプロジェクトとしてスタートしました。
二井昭佳教授、西村亮彦講師、南雲勝志非常勤講師の指導のもと、学生らは班ごとに設置場所やコンセプトを調査?検討し課題にもとづく製作物を提案。選定された4案をもとに担当班でデザインと設計を進めてきました。今後それらを学内の各エリアで製作?展開していきます。
1月25日 資材搬入
1月25日、八王子市で山林保全?再生活動などを行うNPO法人の小津倶楽部と連携し、設計書にもとづいて事前に加工された木材が世田谷キャンパスに運搬されました。34号館ピロティと7号館裏の2か所に輸送トラックが到着し、二井教授、西村講師とともに学生らが総出で荷下ろしと搬入を行いました。
使用するのは、この授業のために八王子市小津町の山林から切り出した丸太を加工した木材です。学生らはこれまでに、小津倶楽部の活動現場を訪れ、伐採や製材現場を視察しながら、木材生産のプロセスや地域づくり活動への理解を深めてきました。
これらの木材を使用し、2月から学生らによる世田谷キャンパス屋外空間における居場所(滞留装置)製作?設置作業を進めていきます。
- 八王子市から34号館に到着した木材
- 34号館ピロティでの搬入の様子
- 7号館裏での搬入の様子
- 丸太搬入の様子
2月4日、7日 製作
2月4日と7日にはキャンパスの各所で製作が行われました。世田谷キャンパス屋外空間4か所での設置を目指し、各チームに分かれて4パターンの「居場所」を作り出します。
【34号館ピロティ】長ベンチ
長さ3.5mの長ベンチ製作チームは、設置場所である34号館ピロティで作業を行いました。
まず、切り株状に短くカットされた丸太の樹皮を手作業ではがす作業からスタートします。座面になる角材2本をサイズが揃うようにノコギリで調整。サンダーや電動かんなで整え、木材用の塗料で表面をカバーします。同時進行で、丸太の脚にビスを打ち込み金具のストッパーを装着させ、座面と組み合わせていきます。3年生のメンバーが集まり、5台のベンチが完成しました。
- 脚部分の樹皮はがし
- 学生らも初めて使用する電動かんな
- 木材の微妙なサイズや座りやすさを調整
- 脚と座面はビスで接続する
【中央図書館と5号館あいだの通路】ウッドデッキ
こちらも3年生による2台のウッドデッキチームです。ウッドデッキは床面の水平と脚の垂直に精度が求められることから、7号館の演習室に材料を移動して、組み立て作業を行いました。
脚とフレームを設計図に沿ってゆがまないように組み立て、脚の外側に幕板を配置し、インパクトドライバーで固定します。床板を採寸どおりにすき間をあけながらセットしてすのこ状の座面が完成。フレームと固定させたら、サンダーで全体にヤスリをかけて表面と角をなめらかにしていきます。長ベンチチームが作業中の34号館ピロティへ運び、耐候性の高い木材用塗料を塗って乾かします。
- フレーム全体の組み立て
- インパクトドライバーでパーツの固定
- 床板ですのこを作り、座面にヤスリをかける
- 塗料を塗って乾燥中
【中央図書館前】背もたれ付ベンチ
【1号館正面】丸太ベンチ
背もたれ付きベンチと丸太ベンチは4年生と大学院生により製作されます。本授業は3年生が対象ですが、昨年コロナ禍のため授業自体が中止となってしまったことで、現4年の有志学生も参加可能となっています。
4年生チームは少数精鋭ながら黙々と作業を進めていました。細長い木材を長短交互に組みあげて高い背もたれを作製。座面とは接続せず、それぞれを土台と組み合わせて自立させることで、独自のフォルムを持つ特徴的なベンチが完成します。背もたれを支える部分もL字金具を取り付けたパーツを組み合わせるなど、緻密な作業が続いていました。
木の質感をそのまま生かした丸太ベンチも、樹皮を手作業ではがすところから作業を始めていきます。
- 背もたれの組み立て作業
- 座面と背もたれをそれぞれ土台に固定して自立させる
- 背もたれを支える部分を作製
- 丸太ベンチは樹皮をはがし表面を整える
2月26日 作品設置?お披露目発表会
2月26日、世田谷キャンパス1号館1階の学生ラウンジにて「令和3年度まちづくりフィールド演習 お披露目会」が開催され、指導にあたった二井教授、西村講師と本演習に参加した学生41名が参加しました。本学学生?厚生課、木材の提供をはじめ伐採作業への参加?見学に協力いただいたNPO法人 小津倶楽部、丸太ベンチのキャスターを提供いただいたヨシモトポール株式会社の担当者を招待し、学生らはチームごとに制作物についてプレゼンテーションを行いました。
開会に先立ち、佐藤圭一学長が挨拶として「椅子というのは休息をとったり人同士をつないだり人間の営みにとって欠かせないツールであり、作品群は皆さんの心のこもったものとして大切に使わせていただく。この体験を今後の人生の糧にしてほしい」と、本演習を高く評価し、協力団体、企業への感謝の言葉を述べました。
プレゼンでは8チームが順に、各チームでの制作工程と成果、苦労した点などを述べながら居場所づくりへの思いを発表し、ゲストの方々からのコメントや質疑に答えました。
丸太ベンチを1人で制作した大学院工学研究科修士2年の田口凌介さんは、制作提案から完成までの試行錯誤をたどりながら「杉本来の姿を街中で生かすことをコンセプトにした。先生方をはじめ多くの方々の協力を得て完成した経緯も含めて、今回の『人をつなぐ居場所づくり』というテーマが示す可能性を感じることができた」と、協力者への謝辞を含めながら発表しました。
プレゼン終了後は、全員で学内4カ所の設置場所を移動し、各作品を見学しました。
NPO法人 小津倶楽部の前原会長からは、小津産の木が存在感のあるベンチになった姿を見て感激したことや、学生の発表を聞き「何かをする時は、面白く、楽しくなければ続かない。いつも思いやりを忘れずに」など、小津倶楽部の精神に合致するものがたくさんあり、嬉しい気持ちになったこと、そして、これから本学や地域の皆さんの居場所になる姿が目に浮かぶようだとの嬉しい言葉をいただきました。
現在それぞれの作品は、学内外での居場所づくりの役割を果たすべく世田谷キャンパス内に設置されています。各設置場所は、長ベンチ?34号館ピロティ、ウッドデッキ?中央図書館裏、背もたれ付ベンチ?正門前、丸太ベンチ?1号館前です。ぜひご活用ください。
- 演習指導、会の進行を務めた二井教授
- 演習指導、会の進行を務めた西村講師
- 学生らの発表の様子
- 会場の様子
- 1号館前に設置した丸太ベンチお披露目の様子
- 34号館ピロティの長ベンチを前に参加者全員で記念撮影