2022年06月21日
建築学系の学生がキャップハンディ体験を実施~誰もがアクセスしやすい大学をめざした建築福祉からの視点~
理工学部建築学系1年生の必修科目「建築基礎演習」で6月11日、世田谷キャンパスを利用したキャップハンディ体験※が行われました。本科目は建築学系の初年次教育であり、全15回のうち2回の授業(3?4限)を使って、本学系3コースの一つである建築福祉?医療コースに関する理解を深めるために実施されたもので、71人の1年生が参加しました。
また、「建築と人間工学」を履修する3年生32人と、建築福祉分野に関心を持つ2年生4人がグループのサポーターとして、田中千歳研究室?寺内義典研究室の学生15人と有志で参加した政経学部4年生1人がグループのリーダーとして参加し、1年生とキャンパス内を回りながら建物の計測などを含めたバリアフリー点検を行いました。
※キャップハンディ体験:ハンディを持つ疑似体験を通じて、障害者が直面する困難を理解するプログラムのこと。ここでは、車いす、アイマスクと白杖、高齢者疑似体験グッズを用いています。
寺内義典教授から授業のねらいと点検の視点についてのガイダンスを受けた学生らは、「足のけがで歩けない大学生」「講演会を聴講に来た全盲の大学生」「孫の通う大学を訪ねた祖父母」という3つの役割を演じる者と介助者、記録者、計測者などの役割を決め出発。1994年のハートビル法以前と以降に建てられた2校舎を90分かけて回り、校舎の周囲と出入口を点検しました。
- 授業のねらいを説明する寺内教授
- グループリーダーとサポーターの学生らを紹介
キャップハンディで気づく利用者の視点
点検では、それぞれの役割を担う学生が介助者の介助のもと順番に校舎出入口を利用し、階段の段差やスロープの傾斜角度、手すりの高さ、通路の幅などを計測しました。車いす利用者は「平坦に見える通路でも想像以上の振動があったり傾斜があって移動しづらい場所があったりする」「3センチの段差でも車いすの前輪を上げなければ通過できない」「開けた扉が止まらないので一人では通過できない」、アイマスクと白杖を持って歩いた学生は「自動ドアの溝に白杖が引っかかる」「狭い通路や階段では介助者と一緒には歩きづらい」、高齢者疑似体験グッズを利用して歩いた学生は「腰が曲がった状態で、さらに白内障体験のゴーグルをはめると、視界が制限されて高い場所が見えないし、高い手すりにはつかまることができない」など気づいたことを声に出し、記録係がメモをしながら進みました。
- スロープの計測を行う学生と担当教員の田中教授
- アクセスのしやすさを確認
- 介助者役の誘導のもと建物の出入口を通る学生
- 高齢者疑似体験グッズを装着して階段を下りる学生
誰もがアクセスしやすいキャンパスとは~建築を学ぶ者として~
点検後に7102教室に戻った学生らは、校舎のマップを広げ、プリントした現場写真を貼りながら気づいた点をまとめる作業を行いました。
最後には各グループからの発表が行われ、キャップハンディ体験をして得られた感想や、法律施行後の建物の使いやすさ、物の配置によって利用しづらくなっている箇所もあることなど、さまざまな角度から意見が出されました。
授業に参加した1年生の女子学生は「建物がこんなに人の生活に関係していると思わなかった。建築に携わる上で必要な視点を得ることができた」と話し、3年生の男子学生は「授業で勉強している分野ではあったが、バリアフリーに関する法律以降に建てられた建物でも使いづらさを感じる箇所があることがわかった。1年生からも多くの意見が出されており、良い学びができた」と話しました。
授業の担当教員である寺内教授は、「誰もがアクセスしやすいキャンパスを実現するためには、障害者や高齢者を含めたさまざまな人々に配慮したキャンパスをめざす必要がある。今回の授業で、1年生にはさまざまな身体的制限のある利用者の立場に立って考える視点を、3年生にはアクセスしやすい建物について具体的な考察を得ることを目的とした。学生らは予想以上に多くの気づきを得てくれた」と話しました。
- 発表準備を行う学生ら
- グループごとの発表の様子